プロバイダと通信事業者の違い

戸根先生

こんにちは。
戸根先生のご著作「ネットワークはなぜつながるのか」中国版の翻訳を担当するシュウと申します。
この本の内容について、お伺いしたいことがありますので、よろしくお願いします。

第4章にはアクセス回線について紹介していますが、「プロバイダ」や「通信事業者」などいろいろな名前が出ています。
中国では事情が違うかもしれませんが、「プロバイダ」や「通信事業者」の違いについて詳しく教えていただけますか?
中国では、「ISP」という名前が多用されていますが、上記のどちらに該当しますか?

よろしくお願いします。

名前: 
シュウ
日時: 
16/07/03 17:00

コメント

シュウさん、はじめまして。

通信事業者というのは、通信事業を営む会社を指す言葉で、
下記のものがあります。

・仮想移動体通信事業者
・移動体通信事業者
・携帯電話事業者
・電気通信事業者

この中には、電話を始めとした、さまざまな通信事業があり、
その中にインターネット接続サービスが含まれています。
そのインターネット接続サービスを提供する会社を指す言葉がプロバイダであり、
ISP(インターネットサービスプロバイダ)を省略した言い方です。

中国の事情はわかりませんが、日本では、
プロバイダとISPは同じです。
そして、インターネットは通信事業に含まれますから、
ISPは通信事業者でもあります。

それから、私の本の中では、次のように使い分けています。
インターネットに的を絞れる場合はプロバイダ、
インターネット以外のものを含む場合は通信事業者

こんな説明で分かるかしら?

素早いご回答ですね!驚きました!

つまり、プロバイダ(ISP)は通信事業者の業務形態のひとつ、ということですね?
中国ではほとんど区別されていないので使い分けが難しいかもしれません。

勉強になりました。ありがとうございます。

> プロバイダ(ISP)は通信事業者の業務形態のひとつ

そうです!

> 中国ではほとんど区別されていないので

中国では、ISPと通信事業者を区別する必要はないかもしれません。
というのは、両者を区別する理由は日本の特殊事情にあるからです。

日本のアクセス回線を提供する会社の中には(具体的には、NTT東西)
いろいろな事情があって、インターネットサービスを提供できない会社があります。
インターネットサービスを提供しないのですから、その会社はISPではありません。
すると、アクセス回線をプロバイダが提供する、というように書くと、
事実と異なってしまうのです。
そこで、アクセス回線は通信事業者が提供する、という風に書いているわけです。

こういう特殊事情がなければ、
わざわざ通信事業者とISPを区別する必要はないでしょう。

なるほど!確かに中国にはこのような事情がありません。
私の知る限り、インターネットサービスを提供しない通信事業者が存在しません。

わかりました。中国語にはわざわざ区別しないようにします。
ご回答ありがとうございます。

実は、中国には「二次プロバイダ」という概念があります。
つまり、アクセス回線を提供しますが、バックボーンは他のプロバイダが帯域を貸し出します。
中国ではバックボーンネットワークを所有する会社は3つの国営会社(中国電信、中国移動、中国連通)だけですから。
これはNTT東西とはまた違う形でしょうか?

2次プロバイダという考え方は日本にもあります。
と言いますか、インターネット全体に共通する考え方だと思います。

インターネットの中核部分を構成するプロバイダ(1次プロバイダ、Tier 1)に
ぶら下がる形で繋がり、ユーザにインターネットサービスを提供するプロバイダです。
これが2次プロバイダ(Tier 2)で、さらに、2次にぶら下がるのが3次、、、
という具合の考え方です。
そして、日本にも多数の2次プロバイダが存在します。

でも、これはプロバイダを分類する考え方であって、
NTT東西の考え方とは違います。
NTT東西はインターネットのサービスは提供しない、
つまり、プロバイダではないのですから、
1次でも2次でもありません。

繰り返しになりますが、
NTT東西は、プロバイダ(1次、2次、、、)とユーザを結ぶ
アクセス回線を提供するだけで、
インターネットサービスは提供しません。
というか、日本の制度上、それが禁止されているんです。

なるほど、これではっきりわかりました。
ありがとうございます!

では日本の事情について、私が脚注を使って少し説明します。
でなければ辻褄が合わないところがある気がします・・・

日本の事情が分かれば、理解の助けになるでしょう。

他にも分からない点あったら連絡ください。
翻訳よろしくお願いします。